専門家インタビューマネジメントに役立ち、ステージアップに貢献する人事制度診療所を開業した院長は、多かれ少なかれ、労務の問題に頭を悩ませるものです。しかし分院展開や介護事業など事業規模が拡大すると、労務の問題に加えて人事管理の問題が大きくなってきます。診療所のステージアップのために、人事制度はどう役に立つのか。全国のクリニックで人事制度構築・運用をご支援している松浦総太郎さん(株式会社日本経営 コンサルタント)に、コンサルタントの視点をお聞きしました。― 松浦さんがご支援している診療所は、どのような診療所が多いですか?松浦:分院展開したり介護事業を展開するなど事業が拡大し、スタッフが30名以上になってこられると、何らかの人事的な課題が大きくなる診療所が多くなります。労務だけではなく、人事管理や制度の問題ですね。給与の決定基準や、それに付随して採用の際の初任給、さらには給与決定の根拠としての人事評価制度や、人事制度と連動た組織のマネジメント(人の管理)をどうするかといった問題です。ここ数年で、診療所さまからのご相談が明らかに増えています。― それぞれ組織独特の課題がある中で、どのように課題にアプローチするのですか?松浦:まず、多くの組織で「事業展望やビジョンはあったとしても、それを実現させる組織の問題が整理されていない」状態です。ですので、コンサルティングの前にまずトップの考える達成したい組織の状況と、それに伴う人事管理課題をお聞きするのですが、この段階からコンサルティングの視点を交えた壁打ちをすることになります。人事制度は「どう設計するか」の前に、マネジメントのツールとして機能することが目的です。そうなるための運用状況を描きながら、課題と解決策を掘り下げていくことになります。トップの考えや方針を実現させるためのフレームワークとして、私どもは「4つの経営機能」という考え方をしています。4つの経営機能 : ①トップ方針 ②戦略と計画 ③役割権限 ④実行プロセス詳細は、『「組織マネジメント」実践論(プレジデント社/株式会社日本経営 橋本竜也著)』にて詳しくご紹介していますが、①組織のスタンスを明確にして、現場に浸透させること②どこに経営資源を集中し、いつまでに何をどれだけ達成するのか明確にすること③戦略遂行に必要な、役職別・職種別の役割を明確にし説明したうえで、適切な権限を付与すること④戦略を効果的に遂行しているかどうか、モニタリング(進捗管理)する仕組みをつくることこの4つを機能させるために、人事制度をどのように構築・運用するかを考えます。― 4つの機能は明快ですが、自分たちで実現するのは難しいのでしょうか?松浦:例えば「トップ方針」一つをとっても、事業を拡大したい、こんな診療をしたい、という強い情熱と具体的な戦略をお持ちの院長は、少なくありません。しかし、トップがそう思っていることと、現場スタッフまでそれが浸透していることは全く別問題です。あるいは、それを実現するためには「どんなチームである必要があるか」について、明確に方針を描いているトップは、それほど多くはないと思います。まずは壁打ちを通してトップの方針を明確にします。それを踏まえて、実現するための戦略や計画、マネジメント体制や組織体制の課題と必要な制度のステップをご提案します。予算とスケジュール感がマッチすれば、コンサルティングがスタートすることになります。― 具体的なコンサルティングの内容は、どのような内容ですか?松浦:実際のコンサルティングは、オンラインを中心に月1,2回の打ち合わせを通して「伴走型」でご支援することになります。人事制度に関しては、人事制度グランドデザインの設計階層別等級制度の設計人事評価制度の設計賃金制度の設計社員説明会評価者研修など、約1年ほどかけてご支援していきます。併せて、「人」と「お金」は車の両輪ですので、管理会計や財務についても専門家に連携して並行してご支援することが多くなります。― マネジメントツールとして機能するために、一言で言うと何がポイントですか?松浦:4つの経営機能のフレームワークと連動しますが、あえて一言で表現すれば、「4つのフレームワークを意識して実行できるツールになっているか」ということです。そうなるような設計をすることと、それぞれが役割を果たすようなマネジメントをすることが、肝になります。例えば、人事評価に当たって、相対評価か絶対評価かという問題があります。「この人はS」「この人はC」などと比較して評価してしまいますが、理想は「全員がS評価」です。本気でそう信じて、スタッフ誰もがS評価を目指す組織と、「評価結果についてはあまり関心がない」と思っているような組織では、事業の成果は大きな差が出るはずです。ただし、現実にはとても難しい事です。トップの方針が明確に伝わっていなかったり、階層が違うにもかかわらず、役割が同じで何が違うのか分からなかったり、スタッフが成果に対してコミットメントしていなかったり、貢献に応じて報いられるという信頼がなかったりなど、阻害要因はいくつもあります。― 医師でなければ診察できない以上、診療所は特殊ではないですか?松浦:診察という面ではそうかもしれませんが、マネジメントや人事制度という意味では、私は(規模の大きな)診療所の人事制度は、中小企業の人事制度にむしろ近いと思っています。事業が急成長したり、新たな事業にシフトしたり、組織スタイルが変化したり、家業だったものを企業にしていこうというとき、直面する課題は、中小企業も診療所も、同じような課題だからです。このようなときには、人事制度をきちんと設計したり、すでにあるものを大きく見直すべきタイミングです。人事制度が機能していると、マネジメントは善循環するはずです。しかし機能していないと、そこがボトルネックになり、成長が阻害されてしまいます。― 最後に、人事制度のコンサルティングは、どれくらいの規模のクリニックからのご相談が多いですか?松浦:本当に大規模なクリニックもありますので一概には言えないのですが、30名を超えてくるとやはり人事制度の課題が出てきますし、分院展開や介護事業などされていると、簡単に100名を超えてしまいます。ただ、規模よりも重要なことは、私たちが関わることで、その組織がよりよくなるかどうか、お役に立って成果を出せるかどうかです。最初のご面談で、組織がよくなるイメージをご一緒に描けるかどうか。オンラインなど情報交換にて、ご確認いただければと思います。もちろん、最初のご相談は無料です。トップが、マネジメントの伸びしろ、可能性を信じている組織は、自力でもきっとより大きく成長していかれます。私たちの知見が少しでもその後押しをしてお役に立つことができましたら、これ以上の喜びはありません。株式会社日本経営 組織人事コンサルタント松浦総太郎PR:大規模クリニック向けの運営支援 は「こちら」