コンサルティング事例これからの社会福祉法人に必要なのは、数字に対する意識改革新型コロナや物価高騰などの影響を受け、厳しい経営状態にある社会福祉法人は少なくありません。そうした状況下で黒字転換を図り、安定経営の基盤を築かれたのが社会福祉法人藤島会様です。日本経営とは10年ほどのお付き合いになりますが、今回は2022年から約2年かけて実施した収益改善の取り組みについて、理事長の屋敷様と事務長の塩田様にお話をお伺いしました。課題外部環境の変化により業績が悪化。法人として目指すべき方向を明確にしたい。理事長のリーダーシップに頼らない組織作りが必要。成果前年度対比での収益改善が図れた。部門別で採算が分かる仕組みを作ったことで、職員の数字に対する意識が変わった。│事業内容│「藤島会で働いて良かった」と誇りをもって言える社会福祉法人に― はじめに、藤島会様の事業と、事業を推進される中で大事にされていることを教えてください。理事長 屋敷様(以下、屋敷):社会福祉法人藤島会は、特別養護老人ホームやケアハウス、グループホームなどの高齢者介護施設をはじめ、地域包括支援センターや認定こども園など、計9つの事業所を福井県下で展開しています。経営者として大事にしているのは、福井県で介護保育サービスNo.1の社会福祉法人を目指し、それを職員に示していくことです。これは単にステータスを求めているのではなく、トップである私が大きな目標を持たなければ、職員が誇りや働きがいを感じられないと思うからです。職員たちが「藤島会で働いて良かった」と思える法人になってはじめて、ご利用者様に喜んでいただけるサービスを提供できます。それが利益につながり、事業の継続につながるものと考えます。|課題と背景|業績低迷を脱するために必要な「組織作り」と「職員の意識改革」― 抱えておられた経営課題とその背景についてお聞かせください。事務長 塩田様(以下、塩田):新型コロナの影響や物価高騰のあおりを受けて法人業績が低迷し、改めて法人として目指すべき方向性を明確にする必要がありました。同時に職員、特に幹部職員である管理者の意識改革も必要だなと。というのも、私は銀行から転職して8年ほど前に藤島会に入職したのですが、当初不思議に感じたのは、本部で確認・判断する事案が多いことです。これは各施設の管理者の権限が少ないことと、法人として具体的な目標を示せていないのが原因だと考えました。屋敷理事長は理事長に就任する前からリーダーシップを発揮しており、「地域No.1へ」という想いは多くの職員に伝わっていたと思います。ただ、本部の人員が少ないせいもあってか、具体的な戦略にまで落とし込めていない。目標を共有できる仕組みを作り、それを実務的に進めていくのが私の役目だと考えています。屋敷:塩田事務長が言ったとおり、私の考えと職員の考えに乖離が生まれ、うまく経営の舵取りができていなかったのです。これは2022年以前から感じていたことですが、環境変化で業績が低迷する中、改めて組織体制の見直しの必要性を感じました。|コンサルタント導入の経緯|経営課題は待ってくれない。右腕となる人を求めて― 課題解決にあたり内部だけで進める道もある中、なぜ外部のコンサルタントを活用する意思決定をされたのですか。屋敷:日本経営さんの支援を初めて受けたのは2015年でしたね。きっかけは、2013年末 に「第2藤島園そよかぜホーム」がオープンして従業員が増えたことです。それまでは全従業員の人となりをある程度把握できていたのですが、150名を超えたあたりから全体を見るのは不可能だと気づきました。先ほども申し上げたとおり、私の偏った見方だけでは藤島会を適切に運営できないという思いもあり、であれば外部のプロの力をお借りしようと考えた次第です。塩田:自分たちでゼロから仕組みを構築するには多大な時間と人員が必要です。経営課題は待ってくれませんから、専門家のノウハウを取り入れて効率的に進めていくのが得策だと思いました。また、過去に内部の人間を巻き込んで課題解決に取り組んでこともありますが、なかなか理解を得られず…。なので、右腕になってくれる人を求めていたというのもありました。― その中で、日本経営を選んでくださったのはなぜですか。屋敷:日本経営さんは当時から、医療分野において日本トップクラスのコンサル会社でした。ただ、介護分野のコンサルの実績は少なく、これからというところ。しかし、かえってそこが信頼できたといいますか。いくつか紹介を受け、他のコンサル会社の方ともお会いしましたが、腹を割って話せるかというとそうでもない。そんな中、日本経営さんは同じ目線で対応してくれました。「お互いに勉強して成長していきましょう」というスタンスに、非常に心強さを感じましたね。塩田:屋敷理事長と同じで、一番の決め手は担当者の真摯な対応です。定期的に来訪いただき職員とも面談してくだるので、職員の特徴や組織の体質なども理解してくれています。組織作りにおいて、そういう交流はとても大事なことだと思います。|課題の解決方法と成果|職員が生む利益と、赤字・黒字の見える化で黒字転換を図る― 2022年から収益改善を目的としたご支援をさせていただいています。われわれコンサルタントを活用しながら、どのように課題にアプローチされましたか。屋敷:今回の取り組みで重視したのは、権限委譲と数字に対する意識改革です。頑張っている職員には将来、藤島会をリードする存在になってほしい。そのためにはやはり、自分で判断して決定するという力が必要ですし、自分たちが生む利益というものを意識してもらう必要がありました。塩田:具体的なところで言いますと、最初に取り組んだのが全事業部のBSCの見直しです。数年前に日本経営さんのご支援を受けてBSCを構築しましたが、環境変化に対応したワンランク上のBSCが必要になってきたのです。幹部職員と共に中期ビジョンと中期経営計画を策定し、法人が目指す方向性と管理者がすべきことを明確にしました。管理者と共通認識ができたところで、収益改善を図るための具体的なツールとして「部門別家計簿」を導入しました。これにより、職員は自分の働きがどのくらいの利益を生むのか、管理者は自分の施設が赤字なのか黒字なのかを一目で分かる仕組みを整えることができました。― その取り組みによってどのような成果を得られましたか。屋敷:第一に、前年度対比で収益改善を図れたことです。社会福祉法人の経営環境は厳しい状況にあり、特養を運営されている法人の6割強が赤字経営と言われています。そんな中、われわれは日本経営さんのご支援もあって黒字に転じることができました。管理者とは毎月進捗ミーティングを実施していますが、そこでも大きな成果を感じています。「どれだけ稼働すると損益分岐点を上回るか」「時間あたりの売上をどれだけ上げると黒字に入っていくか」など、具体的な数字を基にして話し合えるようになりました。また、人材採用においても「一人辞めたから一人採用する」と安易に考える管理者や主任はいなくなりましたね。今回の取り組みを経て、経営悪化や人材不足が深刻な社会福祉法人だからこそ、数字に対する意識改革の重要性を実感しました。― 適正な人員数については、多くの社会福祉法人の経営陣が悩まれている部分だと思います。それを現場の職員が採算を踏まえて考えられるようになったのは、非常に頼もしいことですね。やはり数字の可視化が大きなポイントでしょうか。塩田:そうですね。「自分で数字を見る」と同時に「自分の数字も見られている」という環境を作れたことが大きかったのだと思います。この業界で働く人たちは、利益を上げる、生産性を上げるというのを度外視してしまう傾向があります。しかし、きちんと数字を示せば自ずと責任が生まれ、意識改革を行えるというのを目の当たりにしました。実際に部門別家計簿以外でも、職員自らが指標化する動きが出ています。― 福井県で介護保育サービスNo.1を目指す取り組みに終わりはないと思います。今後の展望をお聞かせください。屋敷:ビジネスモデルの成功例と言うとおこがましいですが、経営やケアの手本となるような社会福祉法人でありたいと思います。合併を検討されている社会福祉法人さんがいらしたら、真っ先に声がかかる法人になっていたいですね。職員に期待することは、介護保育のオピニオンリーダーとしての活躍です。現在私は老施協やリハの協議会の役員を務めていますが、管理者や主任層にも同じように地域で信頼関係を構築する能力を身につけてほしいですね。|コンサルタントの活用ポイント|職員を守るために、プライドを捨てること― 最後に、コンサルタントの導入・活用を検討されている社会福祉法人に向けて、コンサル活用時のコツや心構えなどを教えてください。塩田:自分たちだけでは何年もかかることを、コンサルタントの力を借りれば半年や一年でベースを作ることができます。たとえば、一足飛びで進めるツールを提供してもらえたり、考え方を教えていただいたり。ただ、一つ忘れてはならないのは、実行するのは自分たちであるということ。日本経営さんはよく「コンサルタントは一つのツールです」とおっしゃいますが、私もそのように思っています。ですから内部に対して、なぜ導入するのか、この取り組みが何につながるのかというあたりは、丁寧に時間をかけて説明していくことが大切だと思います。屋敷:コンサルタントを導入するということは、現状の否定でもあります。意思決定をする理事長本人をはじめ、管理者や職員に対して「あなたのやり方ではだめですよ」と言っているようなものですから。プライドが傷つきますし、実際に拒否反応を示す管理者もいました。その際、私が管理者たちに言ったのは、「あなたのプライドで100人200人の職員を守れますか」ということ。これから何十年と地域に根ざして安定経営をし、職員もしっかり雇用して成長させたいと思うのなら、小さなプライドは捨て、最善と思うことは手探りでもチャレンジすべきです。導入に二の足を踏んでいる経営者や経営幹部の方がいらしたら、「職員の未来のためにプライドは捨てましょう」とお伝えしたいですね。事業者名:社会福祉法人藤島会所在地(都道府県):福井県従業員数:約200名URL:https://www.fujishimaen.or.jp/